【未経験の20代へ】「フレームワークが分からない」という不安を解消します

この記事を書いた人:ヤジ キタオ(元採用担当者/経理スペシャリスト)

経理マンとして46年間務め、税理士事務所から製造業メーカーまで複数回の転職を経験。さらに、職場では20代から50代の多様な人材を同僚・部下として受け入れ、指導・育成した経験を持ち、「転職する側」と「現場で人材を受け入れ育成する側」双方の視点を知る専門家です。
経理への転職を目指す20代のあなた。「簿記や会計の勉強は進んでいるけれど、『問題解決能力』や『ロジカルな思考力』をどう身につければいいんだろう…」と不安を感じていませんか?
AI時代を生き抜く最強の経理パーソンになるには、定型業務を自動化するITスキル(VBA)と、会社の課題の本質を見抜く問題解決のフレームワークが必要だと以下の記事でお伝えしました。しかし、これらの思考ツールが具体的に「何なのか」「どう役立つのか」が分からなければ、知識を活かすことはできません。

このブログでは、誰もが憧れる「経営層を動かせる経理」が必ず使うフレームワークの基礎を解説します。そして、経理の最重要業務である「支払い処理の自動化」事例を交えながら、あなたの市場価値を10倍にするロジカルな手順を、誰でも再現できるように解説します。
このブログでわかること(疑問・解決リスト)

- 図解思考とフレームワークの具体的な役割と価値は?
- ロジックツリーやプロコンリストといったフレームワークの具体的な「使い方」は?
- 複雑な支払い業務の効率化という実務課題に対し、思考ツールをどう適用するのか?
- 問題解決の土台となる図解思考の役割とは何か?
なぜ今、経理に「図解思考」と「フレームワーク」が必要なのか?

本論に入る前に、「図解思考」、「フレームワーク」について、まず、ザックリ理解してください。
1. 図解思考とは:あなたの発想を「見える化」する技術
図解思考とは、自分の考えや情報の関係性・構造を整理し、理解した内容を図として残す技術です。他人向けの見栄えより、自分のための理解の可視化を目的とします。
箇条書きではなく図解でメモを取ることで、情報の細切れを全体像として配置し、思考を整理できます。これにより、論理的思考と直感的思考が同時に磨かれ、自分の理解や発想が「見える化」されます。このスキルは、仕事の生産性を劇的に高める、シンプルで効果が持続するビジネススキルです。
2. フレームワークのとは:問題解決の「型」で最短ルートへ
フレームワークとは、問題解決のための思考の枠組みです。先人たちの知恵から生まれた貴重なツールで、課題を整理し、最善の解決策を導くための手順を提供します。
これを使うことで、課題の本質に最短でたどり着き、試行錯誤の時間を節約できます。また、論理的思考(ロジカルシンキング)を実践的に養うことも可能です。忙しいビジネスパーソンでも、限られた時間の中で的確な答えを導き出すための「型」として活用できます。
最強経理の武器は「論理的思考力」!3つの思考ツール活用ルール

AI時代に市場価値を高める経理パーソンになるためには、単に正確に数字を扱うだけでなく、数字の裏にある「会社の課題の本質」を見抜き、解決策をロジカルに提言する能力が不可欠です。
あなたが今から身につけるべき市場価値10倍の思考ツール活用ルールは、以下の3つです。
- 図解思考:問題を整理し、本質を掴む前段階の思考力を養う。
- ロジックツリー(フレームワーク1):すべてを可視化し、問題と選択肢を細分化する。
- プロコンリスト(フレームワーク2):評価軸を明確化し、主観ではなくデータで最善策を判断する。
AIに代替されない「思考と提言」の領域に集中するため

AIやRPA(VBAを含む)は、「入力・計算・集計」といった定型的な作業の効率化を劇的に進めます。
しかし、AIは「どのシステムを選ぶべきか?」「この問題の原因は何か?」といった判断や戦略の領域は担えません。
最強の経理とは、AIに作業を任せ、自分は「問題解決」と「未来の創造」という、高付加価値化された領域にリソースを集中できる人材です。思考ツールは、この高付加価値な仕事の質とスピードを保証するための「思考のOS」のような役割を果たします。
フレームワークの多様性こそが、あなたの市場価値を高める
今回取り上げるロジックツリーとプロコンリストのほかにも、SWOT分析(経営環境分析)など、問題の内容に応じて使い分けるべきフレームワークが多数存在します。
これら多様な思考ツールを適切に使いこなすには、各自が書籍や専門サイトなどで学び、「この課題にはこの思考ツールを使う」という訓練を積むことが不可欠です。

フレームワークは、実際に使い倒すことで、本当の力をあなたに与えます。頭だけで理解しただけでは、自分のものにならないということをよく理解してください。
【お勧め書籍紹介】図解思考、フレームワークの考え方、使い方
特に、問題の本質を掴むための「図解思考」、および「フレームワーク」を使った思考力は、あらゆるビジネスシーンで役立ちます。この力を鍛えるために、以下の書籍などで体系的に学ぶことをお勧めします。
- 『頭がよくなる「図解思考の技術」』(著者:永田豊志):自分の考えや情報の関係性・構造を整理し、理解した内容をそのまま図として表現し、問題を可視化できる基本を学べます。
- 『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』(著者:永田豊志):様々な場面で活用できるフレームワークが網羅されています。
- 『コンサルタントが使っているフレームワーク思考法』(著者:高橋健三志):今日から即使える、25種類のフレームワークの使い方を、実際のビジネスシーンをに即したストーリーを元に説明してされています。
支払い自動化システム選定に見る思考ツールの使い方

ここでは、経理の核心業務の一つである「支払い処理の効率化」を事例とし、あなたがどのように論理的な解決策を提示するのかを解説します。
👉【解決したい課題の背景】
現在、貴社では買掛金や未払金といった会計ソフト上の支払い残高を、経理担当者が手作業で集計・加工し、ネットバンキングで支払指示を出しています。この「集計と加工」のプロセスに時間がかかり、ミスも発生しやすくなっています。
🔷【解決策の目標】
会計ソフトとネットバンキングの間に「支払い処理に特化し、全銀データを自動作成するソフト」を導入し、支払いデータを自動的に加工・連携させることで、支払い処理にかかる時間を80%短縮し、支払い時に発生するミスをゼロにすることを目指します。
ステップ1:図解思考(思考の土台)で問題全体を俯瞰する
まず、解決すべき課題(支払い処理の遅延とミス)の全体像を理解し、ボトルネックを把握します。この「全体像の把握」に図解思考のスキルが役立ちます。

☝️この図は、問題発生から解決までの流れを示しています。
このように、文章に頼らず、各要素を図にまとめて思考を進める手法を「図解思考」と呼びます。この図を、文章に焼き直したら以下のようになります。
- 問題の特定と原因分析
- 問題: ネットバンキングでの支払いミスの発生、および作業時間の長期化。
- 原因: 会計システムとネットバンキングの間で、手作業によるデータ作成・連携が行われていること。
- 解決策の決定と候補の選定
- 解決策: 業務効率化のための新規ソフトウェアの導入を決定。
- 購入方法:
- 当社に出入りの業者(既存チャネル)
- インターネット検索(新規チャネル)
- 候補: 上記のチャネルから2種類のソフトウェアを候補として選定。
- 比較検討と製品決定
- 比較項目の決定: 2つのソフトウェアを比較するための項目を、フレームワークである「ロジックツリー」を用いて分析・決定します。
- 製品の比較検討: 決定した比較項目に基づき、フレームワークである「プロコンリスト」 を使用して候補製品を比較検討します。
- 購入製品の決定: プロコンリストの結果から、導入するソフトウェアを最終決定します。
- 導入準備と運用開始
- 機能補完: 導入するシステムに不足している機能は、VBAで作成した補助システムで補います。
- 教育: 新システムを使用するための、経理部門内での操作教育を実施します。
- 運用開始: 準備完了後、経理部門で新システムの使用を開始します。
図解思考とは、複雑な問題や業務プロセスを図を用いて能動的に構造化し、全体像を俯瞰するための思考スキルです。このスキルで「手作業によるデータ加工」が真のボトルネックであることを特定し、次のステップで、どのフレームワークを使い(今回の場合は、ロジックツリー)で何を分解すべきかを明確にします。図を使用することによって、文章で作成するよりも、内容を容易に理解することができます。
フレームワークを使った、ロジカル分析の基本ルール:MECE
MECE(モレなく、ダブりなく)は、ロジックツリー、プロコンリストを含むすべてのフレームワークの土台となる思考の原則です。このルールを守ることで、抜け漏れのない客観的な分析が可能になります。
- Mutually Exclusive(モレなく)
- Collectively Exhaustive(ダブりなく)
ステップ2:ロジックツリー(フレームワーク1)で選定軸を細分化する
これまでの図解思考で目標が「全銀データ作成ソフトの導入」に定まりました。次に、このシステムを論理的に選定するために、フレームワーク(ロジックツリー)を使って評価軸をMECEに細分化します。
☝️課題: 「最適な全銀データ作成ソフトの選定」
比較対象となるシステムが、「何を基準に評価すべきか」という軸で分解します。
- 評価軸
- 必須機能: 正確性、セキュリティ、既存システム連携
- 業務連携・利便性: 操作性(UX)、VBA連携の容易性
- 費用・サポート: 初期コスト、ランニングコスト、サポート体制

ステップ3:プロコンリスト(フレームワーク2)でシステムを客観的に比較する
ロジックツリーで明確になった評価軸(MECEに基づいている)に基づき、プロコンリスト(Pros/Cons List)を作成し、候補のシステムAとシステムBを比較します。
| 評価軸(ロジックツリーの中分類) | システムA(Pros/メリット、Cons/デメリット) | システムB(Pros/メリット、Cons/デメリット) |
| 初期導入費用 | Cons:ライセンス料、カスタマイズ費用 合計200万円 | Pros:ライセンス料、カスタマイズ費用 合計100万円 |
| 全銀データフォーマットの正確性 | Pros: 大手銀行との連携実績が多く信頼性が高い。 | Cons: 実績は少ないが、最新フォーマットへの対応が遅いというレビューあり。 |
| 既存システムとの連携 | Cons: 会計ソフトとの連携には追加のカスタマイズ費用が発生する。 | Pros: 会計ソフトのベンダーが提供しており、連携費用は無料。 |
| VBA連携の容易性 | Pros: APIが公開されており、将来的なVBA/RPAでの自動化が容易。(市場価値10倍の鍵!) | Cons: API非公開。手動でのデータ取り込みが必要。 |
| サポート体制 | Cons: サポート窓口が電話のみで、対応時間が平日限定。 | Pros: 24時間メールサポートがあり、緊急時の対応が可能。 |

評価の結論と提言(VBAを活用した戦略)
このプロコンリストを用いた分析の結果、「システムAは初期費用がかかるが、将来的な業務効率化(VBA連携)や信頼性において大きなメリットがある」という結論が導かれます。
ここで、VBAの知識が活きてきます。システムAの「連携費用」というデメリットを、「VBAで連携システムを低コストで構築し、機能不足を補完できる」という提言に変えることができるのです。
未経験のあなたは、単に「費用が安いBを選びます」ではなく、以下のような戦略的な提言を経営層にすることができます。
「システムBは安価ですが、システムAはVBA連携が容易なため、導入後1年以内に支払い業務を80%自動化できます。連携の機能不足は、VBAによる自前開発で補完し費用を抑えます。よって、長期的な視点からシステムAの導入を推奨します。」
このように、ITスキルとロジカルな分析を組み合わせた提言こそが、AIに代替されないあなたの最高の専門性であり、市場価値を10倍にする最強のテクニックなのです。
ポテンシャルを活かし、AIをパートナーにする最強のルール

フレームワークは、あなたのポテンシャルを最大限に引き出すための思考の設計図です。
図解思考で問題の本質を掴み、ロジックツリーで全体像を把握し、プロコンリストで客観的な評価を下すという思考ツール群の使い方をマスターすれば、あなたはもう単なる「経理担当者」ではありません。
あなたは、会社の「ムダを削減し、未来を創造する経営企画に近いパートナー」へと進化します。この能力こそが、未経験の20代がAI時代を生き抜き、市場価値を高めるための最も重要なルールです。
まとめ:あなたのロジカル分析力が経理の未来だ

AI時代において、経理の仕事は「判断と提言」へと高付加価値化しています。そして、その武器が、思考ツール群(図解思考、ロジックツリー、プロコンリスト)です。

今日学んだフレームワークの使い方を、日々のニュースや身近な問題にも適用し、ロジカル分析力を磨き続けてください。あなたのポテンシャルが、これからの経理の未来を切り開きます!
【Q&A】フレームワークと市場価値に関するよくある質問

| 質問 | 回答 |
| Q1. ロジックツリーはどんな場面で? | 経理部門の日常的な問題解決のほぼすべてに使えます。「決算作業が遅延する原因を特定したい」といった原因分析に最適です。 |
| Q2. 未経験で使いこなせるか不安です。 | 訓練すれば誰でも習得できます。まずはニュースの題材で「原因は何か?」をロジックツリーで3段階に分解する訓練から始めてみましょう。 |
| Q3. VBAなどのITスキルと、フレームワークは、どちらを優先すべきですか? | 同時に学ぶのが最強です。VBA習得には時間を要し、専門家に任せる選択肢もありますが、現場の業務の「実情と本当に必要な仕様」を最も深く理解しているのは、あなた自身です。「フレームワーク」で戦略(何をすべきか)を考え、あなたがVBAの全体像を理解した上でITを活用(どう実行するか)することで、外注や既存システム導入よりも柔軟かつ低コストで、真に現場にフィットした解決策を実現できます。また、現在AIがコード生成を支援するため、VBAの構築時間を大幅に短縮可能であり、VBAの全体像を理解していれば、その効果を最大限に引き出せます。 |


